ケイ酸研究最前線のまとめ


 「有機=ケイ酸化合物」の発見、単離の一番乗りを目指して、世界中のケイ酸研究者が競っているというのが最先端といって良いでしょう。

 

 これまでにも「それ」と思われる報告は相次いでいますが、まだ決定的なものは無いようで近年の分析技術の向上がゴールを近づけていることは間違いなさそうです。ケイ酸という無機物が細胞内で働く有機分子と結合している可能性を考えるに至ったのは、一つは植物プランクトンの珪藻の細胞分裂においてケイ酸が第一の必須元素としてふるまっていること、あと一つはイネの出穂期における成長差がケイ酸供給のあるなしで細胞核量の差と合致したために、ケイ酸は植物の細胞分裂に影響している可能性が高いとされたことでした。

 

 ケイ酸は植物にとって過剰害のない唯一の物質とされてきましたが、これはケイ酸があくまで細胞外の細胞壁(アポプラスト)という場でシリカとして働くために、物理的な強度を増して病害虫や気象ストレスに抵抗性を向上させた結果とみなされて、植物の細胞内とは縁を持たず代謝には直接かかわっていないとする見方が大半でした。2004年に当社が「Si22」を水溶性ケイ酸として販売を始めて、そのケイ酸効果の即効性からそれまで個体のイメージであったケイ酸が水溶性ならば細胞内へも浸透する可能性を探る研究者が数を増して現在に至っています。

 

 これまで認められていたケイ酸効果も水溶性という視点から見直すと、植物の葉などに付着した病原菌に対しては細胞壁レベルで「ハロー」と呼ばれるリング状物質が取り囲み、細胞質内からは「パピラ」と呼ばれるドーム構造の侵入阻止物質が発現することが認められています。どちらの組成も多糖質と大量のケイ酸とカルシウム、少量のマンガン、マグネシウムからなるそうですが、双子葉植物にも発現することで高等植物の持つ現象と言われています。

 ケイ酸がアミノ酸や核酸との複合体が発見されれば間違いなく生化学の一里塚となるでしょう。

 

 また根や葉で吸収されたケイ酸がどのように作物全体に供給されるのか、アポプラストを細胞間質液とともに流れる場合と細胞質内(シンプラスト)を経由する二通りがあるよううですが、これも珪藻と同じようにケイ酸を輸送する仕組みが明らかになりつつあります。

 有機ケイ酸化合物とケイ酸吸収輸送システムが明らかになると、これまで肥料農薬に頼り切った農業から過剰害の無いケイ酸効果を生かしたSDGsのいう「安全安心、環境にやさしい持続可能な農業」の実現が見えてきます。

 

 植物残渣や動物の死骸など有機物の分解はミミズや小動物などにより粉砕された後、バチルス菌などによりアンモニアになり、さらに亜硝酸化菌や硝酸化菌と呼ばれるニトロコッカスやニトロバクターの働きで硝酸イオンまで酸化されます。硝酸イオンは双子葉植物の好む栄養となりますが、この2種の微生物はゼラチンなどの有機培地では増殖せず、栄養豊富な土壌中では働かない変わり者でしたが、ケイ酸培地では増殖し、ケイ酸がいる土壌ではしっかり仕事をすることが解りました。このことからもケイ酸という無機物が有機物と何かしらのかかわりを持っていそうだとの課題が生まれてはいました。

 広島大学がバチルス菌によるケイ酸の蓄積とその意図を研究されていますが、Si22の蓄積がメルク社製試薬に劣らなかったという試験結果を報告いただいています。(下図参照)

 微生物がケイ酸を蓄積し、ケイ酸が微生物あるいは有機物の増殖や働きにかかわっていると思われる現象はますます増加しています。近い将来土と植物と微生物との循環をケイ酸が担っていると証明される日が来るのかも知れません。